包丁を研ぐ、日常を研ぐ、明日を研ぐ
1.包丁の切れ味はお料理の出来を左右する
トマトを切るとき、皮に包丁がスッと入らず、つぶれてしまう。
これは包丁の切れ味が鈍ってきているサイン。
毎日のお料理で、食品を切り、まな板にもあたることによって、どんな包丁でも徐々に刃がすりへって切れ味が悪くなってくるものです。
そんな時は包丁を研いでみましょう。
砥石さえ揃えれば、意外と簡単にできます。(今はホームセンターなどでも気軽に買えますし、Amazonなどのオンラインショッピングでもすぐに手に入ります。)
包丁の切れ味が悪いと、切る時に変な力がかかって思わぬ怪我の原因にもなります。何より、包丁の切れ味はお料理の出来を左右します。
鈍った刃で切ると、断面から食品の旨味成分が流れ出してしまうのです。
やっぱり包丁はスパッと切れて欲しいもの。お料理をするときの気分も違ってきます。
「私、料理が上手くなったかも!」
こういった気分が上がる効果も重要ですよね。
2.包丁の研ぎ方
2-1.研ぐ前に
包丁の研ぎ方についての説明は、検索すると数多のサイトがヒットします。刃物屋さんやホームセンターのサイトで写真入りで、あるいは動画で、解説されていますので、ここでは、筆者が実際にやってみて、「え?これで本当にいいの?」や「よくわからない」あるいは「やってみて、そうか!」といった気づきの内容を中心にすすめていきます。
まず最初に、研ぐのはその日のお料理が全て終わった後にします。
このことについて触れているサイトはあまりないので、是非とも覚えておいて欲しいことです。
お料理を始める前に研いで、よく切れるようにしてから、と思いがちですが、逆なのです。
すべての作業が終わってから、食器の洗い物も、後片付けも、生ごみの始末も終えて、きれいになった台所で、明日のお料理に向けて研ぎます。
その大きな理由は研ぎたての包丁には、砥石の匂いや鉄の金属臭が残っているから。1日おくと、そういった臭いも消えてくれます。ですから、明日のために研ぐのが正しいやり方です。
2-2.用意しよう
用意するものは砥石とふきん。
そして、やはり水を使いますので、台所の流し台の上でするのが適切です。
まずは砥石をボウルなどのため水の中に沈めて、たっぷり水分を含ませておきます。
平らな流し台の上に濡れふきんを敷き、その上に砥石を置いて研ぎ始めます。
この濡れふきんというのが肝心です。砥石が動かないようにするために濡らしたふきんの上が良いのです。
そしてこのふきん、汚れます!洗えばきれいになりますが、使い捨てができる不織布ふきんがおすすめです。
2-3.研ぎ始めよう
洗って、清潔にした包丁を砥石に対して適切な角度に構えて研いでいきます。
表面、裏面によって構える角度は違ってきますし、上から見た角度(砥石に対して斜めにどの程度の角度で構えるのか)、横から見た角度(砥石に対してどの程度刃を浮かせるのか)によってもそれぞれ適切な角度がありますので、詳細は最後に添付した参考サイトを確認してください。
要は、砥石に対して包丁は直角に構えず、少し斜めに。そして、刃はペタンと砥石にくっつけるのではなく、峰の部分を少し浮かせるように構えます。
研ぐときのコツは力の入れ方です。
包丁を軽くすべらせて、手前に引き、向こう側へ押し出すように力を入れて研ぎます。同じ力でゴシゴシと動かさないことです。動画で見ると、研ぎ職人さんの動きは軽やかでいかにも簡単そうに見えますが、角度を一定に保ちつつ軽く引き、強く押し出すを繰り返すのは意外と難しいもの。
でもそこはあまりこだわりすぎないことです。その道何十年の職人のようにいかないのは当たり前ぐらいの感覚で大丈夫です。何度も研ぐことでだんだん上手くなります。研いでいくうちに慣れていきましょう。
包丁ではありませんが、ガラス吹き体験に行ったときのこと。
参加者全員がなかなか上手く膨らませられない、あるいは強く吹きすぎて割れてしまうのを見て、職人さんは「みなさん、僕の職人としてのプライドを守ってくれてありがとう。一発で上手にできてしまっては僕の立場がありません」と言って、笑いをとっていました。
2-4.研ぎ進めよう
研いでいるときは包丁も砥石も水を含ませた状態を維持してください。乾いてきたら、手で適宜水分を補っていきます。
研いでいるうちに、水分にドロと呼ばれる黒い汁のようなものが混じってきます。
見た目も黒くて、なんとなくザラついていて、汚く見えます。
これが最初の方でお伝えしたふきんが汚れる原因です。
ふきんにも包丁にも黒ずんだ細かい、まるで砂鉄のようなものがついてしまうので、つい流してしまいたくなりますが、洗い流さず、拭き取らず、そのまま研ぎすすめてください。ドロは包丁を鋭利に研ぐ助けになってくれるのです。
また、研ぎ続けているとカエリといって刃の部分に目には見えないぐらいの小さなひっかかりができてきます。指でそっと触ってようやく確認できるぐらいのものなので、見落としがちですが、これは正しく研げている証拠です。触れた指先にチクッと感じたら、ヨシっ!とご自分を褒めてあげてください。
刃の表と裏の両面にカエリを確認できたら、仕上げ研ぎを行います。
2-5.仕上げ
砥石のドロを洗い流してから、軽く表裏とも研ぎます。
仕上げ研ぎの際は、研ぐたびに水をかけてドロは落としてください。カエリがなくなったことを指先でそっと触れて確認したら、終了です。
あとは包丁を洗剤をつけたスポンジなどで、柄の部分まできれいに洗っておきましょう。
重曹などの研磨剤入りの洗剤で磨けば、ピカピカになります。
洗い終わったら、すぐに片付けず、乾いたきれいなふきんの上に置いて、乾燥させましょう。
これで、明日からのお料理が楽しみですね。
3.包丁を研ぐことは、日常を研ぐことに
プロの厨房では、片付けの後は必ず毎晩包丁を研いで、明日の料理に備えるらしいです。明日からの料理の出来は今日の研ぎにかかっていると言っても過言ではないと聞きます。
家庭では包丁研ぎを毎日の習慣にするわけにはいきませんが、切れ味が鈍ってきたなと感じた時には面倒がらず、というよりは楽しんで研いでみるのも悪くないと思います。
明日からはスイスイ野菜や肉が切れるようになることを考えながら包丁を研ぐのは、楽しいものです。
そして、道具の手入れが出来を左右するのは、何もお料理に限ったことではありません。
ものとしての道具だけではなく、きっと体も心も整っているかどうかが、今日も、明日も、その次の日もを、より良くできるかどうかを決めているのではないでしょうか。
ピカピカに研ぎ上がった包丁の刃を見て、改めて日常を研ぐことの大切さを感じました。
参考サイト
京都有次 包丁の研ぎ方
東急ハンズ包丁の研ぎ方基本
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